三島由紀夫紀行文集
読みました。
- 作者: 佐藤秀明
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2018/09/15
- メディア: 文庫
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直前に読んだ岡潔の「数学する人生」がどうにもこうにも自分には合わず、3分の2ほど読んだところで読むのを辞めてしまったおり、予備の本として旅行に持ってきたのがこの本でした(もちろん私は旅行には抱えきれないほどの本を持っていくのが常で、今回も1泊の旅行にもかかわらずこの2冊含めて6冊の本をカバンに入れて持ってきていました)。「数学する人生」の内容がどうも自分好みではなかっただけに、理性と感性が研ぎ澄まされた三島調に冒頭の航海日誌から「これだよ、これこれ」と思わずにはいられませんでした。
一冊読み切って振り返ってみても、巨大な太平洋をだた一隻白波を立てて渡る客船プレシデント・ウィルスン、旅が始まろうする予感、その一乗客としての三島、彼のカミソリのような理性と感性の混じるユーモア、冒頭の航海日誌が一番のお気に入りです。
- 作者: 岡潔,森田真生
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2016/02/18
- メディア: 単行本
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旅行の時に読む本は旅行に関する本であったり、現地に関する本であることが求められます。自分にとって旅行とはそれ自体が目的であり手段であります。すなわち移動中の電車や飛行機の道中に持ってきた旅行本を読みこれから始める旅行に向けた気持ちを高めることが旅行の一番のだいご味であり、現地についてしまえば、旅行の目的はほとんど終わってしまったも同然です。
この三島由紀夫紀行文集はアポロの杯をはじめとした、三島の海外旅行見聞録や種々の雑誌に寄稿した2,3ページの国内の紀行文などが納められており、上記の旅行の本としてはまさにうってつけの本でした。
人間小唄
読みました。
- 作者: 町田康
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2010/10/19
- メディア: 単行本
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町田康は好きなのですが、ちょっとこれは…
パンク侍のような救いのない話も僕は好きですが、この人間小唄の主人公たちの動機づけのない残虐なハイテンションにはついていけないし、社会風刺が効いているのかいないのだかの内容と、町田康の駄文的文章もこのテンションでは本当に駄文に見えてしまいます。てめぇ小説の通り締め切り間に合わないから適当な埋め草でやりすごそうとしただろう!
超次元的都合のよさの世界観はパンク侍のようで好きですが、たぶん世間の評価は悪いだろうし、はっきり言って読む価値ないです。
道具としての複素関数
読みました。
ISBN:4534055447:detail
道具としての、というタイトルの割には至って普通の複素関数の本という印象を受けます。
自分としてはちょうどよいくらいの内容で昔やった内容の簡単な復習になってよかったです。特に前半の説明が直感的に理解できるかという点に重点が置かれている感じがして、一見同じように見える実関数と複素関数のどこが違ってどこが同じとみなせるかという点を詳しく説明されている点が感心しました。
複素関数は2次元を2次元に移動させるから4次元という説明が自分的にはかなりストンときたポイントでした。大学のころ、なぜ同じような実関数で成立することが複素関数で成立しないのか、正則という概念がなぜ複素関数にだけ存在するのかがよく和なっていなかったのですが、実関数が2次元なのに対して4次元で関数を成立させようとするので各種演算が同様に起こらないのだという理解ができたことで、その後の説明時自体は大して特徴的てないのに、理解度が段違いに良くなりました。
ただ新刊ということで誤植が多く、そこは直してほいいです。
1年の振り返り②
今年4月から読んだ本は以下の30冊。 もっと読んでいるかと思っていましたが、意外と読んでなかったですね。上下巻やシリーズ物がいくつかあったため体感的には40冊以上読んでいるつもりでした。週一くらいのペースで読書できているのは良い習慣です。理学系の本を全然読んでいないことが分かって愕然としました。もっと読んでいるつもりだったけどなぁ。記録をつけていると自分の体感と結構異なっていることが多くてびっくりです。あと記録付けないと忘れますね。三島の肉体の学校も読んだのに記録付け忘れてここに記載ないこと今気が付きました。
ちなみに2018年に読んだ本の中で一番良かった小説は「夜想曲集」次いで「苦役列車」です。三島由紀夫、トルストイあたりの長編に挑戦できたことはよかったです。 今読んでいるPythonの本と物理化学の本あたりも読み切れば理学系の本の一覧も多少は見栄えが良くなるかも。理学系は読むのに時間がかかるので、年間を通して読んでいる時間は長いのに意外とリストにすると大したことないってことがありますね。といってもこの理学系リストの本にそんなに読むのに時間かかる本なんてないんですけどね。 来年は読んだ論文なんかもちょいちょい備忘録をつけていきたいけど、果たしてそんな余裕があるかな。
小説
- 聖の青春
- 夜想曲集
- 豊饒の海 全4巻
- 怒り 上下
- ルビンの壺が割れた
- 夜行観覧車
- キャプテン・サンダーボルト 上下
- 最後の記憶
- 爪と目
- 苦役列車
- 穴
- チュートリアル
- 少年の改良
- 死んでない者
- アンナ・カレーニナ 全4巻
- 無線横丁
- 月の満ち欠け
- 狼は帰らず
- グロテスク 上下
- 闇を裂く道
理学系
- 12歳の少年が書いた量子力学の教科書
- 数学ガール/ポアンカレ予想 (「数学ガール」シリーズ6)
- フェルマーの最終定理
- 原子・原子核・原子力――わたしが講義で伝えたかったこと
- 世界史を変えた新素材
- 科学の発見
- みんなが欲しかった! 電験三種 全4冊
ノンフィクション・実用書
- 三手詰めハンドブック
- うつ九段
- 住友銀行秘史
一年の振り返り①
このブログは4月から始めたので一年の振り返りをするのは4月のほうが適切な気もします。しかし、いいのです。一年間に一回しか振り返ってはいけないということはなく、任意のタイミングで振り返れば。
1.今年の目標の進捗
4月の初めの記事で次の目標を立てていますがどれくらい達成できたでしょうか。
・ハーフマラソンを2hr以内に走ること
→今年度は追加でハーフマラソンを走ることはないので、目標達成ならず。2時間5分でした。来年こそは2時間切りを目指したいです。
・将棋で初段になること
→かなり厳しい。5月ごろに3級まで上がってから全然やってないです。たぶん今の棋力は5級から6級くらい?でしょうか。もう一度定石を覚えなおさないと。ちょっと将棋まで時間をかけることができなかったですね。
・ブログを定期的に続けられること
→以外にも一番うまくいっている。まだ一個も記事は公開されていませんが、なぜが記事は50個以上かけています。読書記録がほとんどですがそれでもちゃんと記録をつけ続けられているのは良いことです。
・資格をいくつか取得すること
→電検3種と科学工学技士の基礎が取れたので〇。本当は環境測量士が取りたかったけどその受験を忘れていたのが残念。まあでも来年頑張ります。
・Pythonが少しわかるようになること
→6月頃少しやって諦めて、また最近になってちょっと取り組み中。本を一冊買ってPythonの練習をしているけどあまりモチベーションが続いていないのが良くないですね。どうしても同じようなところでモチベーションが途切れてしまって、今も少しストップしています。年末年始の暇な時期に進めていきたいですね。
・タイピングが多少は早くなること
→あんまり意識してタイピングの練習してなかったですね。一時期少し練習していたのですが。タイピングの練習はあんまりしていませんがブログを書くスピードは上がってきたので、ブログがタイピングの練習になっているということでしょうか。ここもあんまり達成した感じはないです。
というわけで6個の目標中ブログと資格の2個は完全にクリアで◎。マラソンはあとちょっとってことで〇~△。Pythonは残りの4か月で頑張ろう。将棋とタイピングはほぼ×。って感じですね。
あと4か月後にPythonとタイピングあたりにちゃんと取り組んで向上していることを目指していきたいです。
科学の発見
読みました。
- 作者: スティーヴンワインバーグ,大栗博司,Steven Weinberg,赤根洋子
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2016/05/14
- メディア: 単行本
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ワインバーグによるホイッグ史観的科学史の本でした。ワインバーグ本人もホイッグ史観的本であることを自認していますが、まったくもってその通りで、アリストテレスやデカルト、ベーコンといった科学者と哲学者の中間のような人物たちに対して、現代の視点から科学的でないという痛烈な批判を繰り返し述べられています。「現代の視点から当時の科学を見てはいけない」という科学史の常識を守る気もない言論で、ワインバーグでなかったら誰も振り向いてくれないでしょう。
それだけでなく、かなりえこひいき?な点もあり、ニュートンに関しては錬金術の研究も含めて手放しでほめている一方で、微分積分に関してニュートン同じまたはそれ以上に貢献したライプニッツについては、数学者、哲学者であり科学への貢献はなかったとバッサリ。
現代科学の作法といえる「仮定・仮説」「実験(と観察)」といった考え方で自然に向き合っているかということに重点を置き、各年代の人々を評価するという手法はかなり癖があり、科学史の本としては初めに読むにはあまりよろしくないと感じます。あくまで科学史に対するワインバーグの意見として読むべきでしょう。
科学史という考えから脱却して読む分にはとても面白いです。私はギリシャ哲学~ニュートンの科学革命時代までの歴史書や科学史を読んだことがなかったので、紀元前という遥か太古の時代から天文学の測定に関しては非常に精度よく測定ができおり、惑星が真円軌道を描くと仮定すると観測結果との誤差を説明できないという理由も地動説の採用を躊躇わせたということは初めて知りました(ただしアリストテレス的世界史観によって惑星の軌道は真円軌道であるということは絶対だと考えられていたこともあるらしい)。
天文学の発展は私が思っていた以上に古くから発展しており、その測定精度の向上に伴って天動説から地動説が支持されるようになり、ガリレオによる「実験」の発見から科学法則が加速度的に明らかになっていき、最後ニュートンの万有引力でその集大成をみるという本書後半の科学史の流れはカタルシスがありました。
次はもう少し王道のここら辺の科学史書を読んでみたいです。
グロテスク
読みました。
- 作者: 桐野夏生
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2006/09/01
- メディア: 文庫
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- 作者: 桐野夏生
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2006/09/01
- メディア: 文庫
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絶世の美貌を持ち、幼いころから男に取り入って生きてきたユリコ。
その美貌を持たず、ずっとユリコを憎んできた姉の「わたし」。
お嬢様学園の中で、家柄も才能もない自分を認めることができず、努力すれば追いつけると信じる和恵。
幼いころから売春を続けていたユリコは年齢を重ねるにつれて美貌を失っていきモデルや高級ホステスから最後には安い売春婦に成り下がっていく。和恵もまた一流大学を卒業して、一流企業に就職するも自分のすばらしさをだれからも認めてもらえず、売春婦という裏の顔を持つようになる。そして最後には、奇しくも二人は同一の客から殺されてしまう。
その二人をつなぐ「わたし」は、売春婦にこそならず、市役所のアルバイトで細々と生活しているものの、学生時代に生き残るために身に着けた悪意を強く
桐野夏生らしい、毒をもった女性像、女性社会の世界がこれでもかと言わんばかりに強調されていて、読み進めていく途中でキツくなって、何度もページか止まりました。
しかし、その文章力やさすがでした。特に「わたし」の醜い悪意がユリコや和恵に向けられる描写からは確かな悪意を感じました。また、はじめからすこしおかしいところがあった和恵がだんだんと昼の社会と夜の売春婦とのバランスの平衡感覚が狂っていき、ある臨界点を超えて急激にその2つが逆転してしまい完全に狂ってしまう最後の場面は引き込まれました。
構成にもひとひねりあり、個々の登場人物たちの証言が微妙に異なっていて、各人が各人、自分の都合がいいように物語を捻じ曲げるエゴがむき出しになっていることが分かる妙が面白かったです。
むかし読んだときには女子高と売春婦怖いとしか思いませんでしたが、悪意と気持ち悪さをこれだけの文学性に昇華させた桐野夏生の筆の力はすごいなと感心しました。