グロテスク
読みました。
- 作者: 桐野夏生
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2006/09/01
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絶世の美貌を持ち、幼いころから男に取り入って生きてきたユリコ。
その美貌を持たず、ずっとユリコを憎んできた姉の「わたし」。
お嬢様学園の中で、家柄も才能もない自分を認めることができず、努力すれば追いつけると信じる和恵。
幼いころから売春を続けていたユリコは年齢を重ねるにつれて美貌を失っていきモデルや高級ホステスから最後には安い売春婦に成り下がっていく。和恵もまた一流大学を卒業して、一流企業に就職するも自分のすばらしさをだれからも認めてもらえず、売春婦という裏の顔を持つようになる。そして最後には、奇しくも二人は同一の客から殺されてしまう。
その二人をつなぐ「わたし」は、売春婦にこそならず、市役所のアルバイトで細々と生活しているものの、学生時代に生き残るために身に着けた悪意を強く
桐野夏生らしい、毒をもった女性像、女性社会の世界がこれでもかと言わんばかりに強調されていて、読み進めていく途中でキツくなって、何度もページか止まりました。
しかし、その文章力やさすがでした。特に「わたし」の醜い悪意がユリコや和恵に向けられる描写からは確かな悪意を感じました。また、はじめからすこしおかしいところがあった和恵がだんだんと昼の社会と夜の売春婦とのバランスの平衡感覚が狂っていき、ある臨界点を超えて急激にその2つが逆転してしまい完全に狂ってしまう最後の場面は引き込まれました。
構成にもひとひねりあり、個々の登場人物たちの証言が微妙に異なっていて、各人が各人、自分の都合がいいように物語を捻じ曲げるエゴがむき出しになっていることが分かる妙が面白かったです。
むかし読んだときには女子高と売春婦怖いとしか思いませんでしたが、悪意と気持ち悪さをこれだけの文学性に昇華させた桐野夏生の筆の力はすごいなと感心しました。