1年前の風景

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科学の発見

読みました。

 

科学の発見

科学の発見

 

 

ワインバーグによるホイッグ史観的科学史の本でした。ワインバーグ本人もホイッグ史観的本であることを自認していますが、まったくもってその通りで、アリストテレスデカルト、ベーコンといった科学者と哲学者の中間のような人物たちに対して、現代の視点から科学的でないという痛烈な批判を繰り返し述べられています。「現代の視点から当時の科学を見てはいけない」という科学史の常識を守る気もない言論で、ワインバーグでなかったら誰も振り向いてくれないでしょう。

それだけでなく、かなりえこひいき?な点もあり、ニュートンに関しては錬金術の研究も含めて手放しでほめている一方で、微分積分に関してニュートン同じまたはそれ以上に貢献したライプニッツについては、数学者、哲学者であり科学への貢献はなかったとバッサリ。

現代科学の作法といえる「仮定・仮説」「実験(と観察)」といった考え方で自然に向き合っているかということに重点を置き、各年代の人々を評価するという手法はかなり癖があり、科学史の本としては初めに読むにはあまりよろしくないと感じます。あくまで科学史に対するワインバーグの意見として読むべきでしょう。

科学史という考えから脱却して読む分にはとても面白いです。私はギリシャ哲学~ニュートンの科学革命時代までの歴史書科学史を読んだことがなかったので、紀元前という遥か太古の時代から天文学の測定に関しては非常に精度よく測定ができおり、惑星が真円軌道を描くと仮定すると観測結果との誤差を説明できないという理由も地動説の採用を躊躇わせたということは初めて知りました(ただしアリストテレス的世界史観によって惑星の軌道は真円軌道であるということは絶対だと考えられていたこともあるらしい)。

天文学の発展は私が思っていた以上に古くから発展しており、その測定精度の向上に伴って天動説から地動説が支持されるようになり、ガリレオによる「実験」の発見から科学法則が加速度的に明らかになっていき、最後ニュートン万有引力でその集大成をみるという本書後半の科学史の流れはカタルシスがありました。

次はもう少し王道のここら辺の科学史書を読んでみたいです。