1年前の風景

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アンナ・カレーニナ

デレク・ハートフィールドは自身の著書「」でこう語っているます。


風の歌を聴け」を50回以上読んだ「風の歌を聴け」の大ファンとしていつかは作品中に記載されている小説は全部読まなければと思っていたのですが、いかんせんページが多いのと、カラマーゾフの兄弟を読みきれなかった経験からこのロシア文学になかなか食指がのびませんでしたが、やっとこさ読みました。

アンナ・カレーニナ〈1〉 (光文社古典新訳文庫)

アンナ・カレーニナ〈1〉 (光文社古典新訳文庫)

アンナ・カレーニナ〈2〉 (光文社古典新訳文庫)

アンナ・カレーニナ〈2〉 (光文社古典新訳文庫)

アンナ・カレーニナ〈3〉 (光文社古典新訳文庫)

アンナ・カレーニナ〈3〉 (光文社古典新訳文庫)

アンナ・カレーニナ〈4〉 (光文社古典新訳文庫)

アンナ・カレーニナ〈4〉 (光文社古典新訳文庫)

3週間ほどかけて読み、読み切った!っという充実感がありましたので少し長くまとめます。

全四巻。文庫本にして2000ページ近い大長編でした。大長編にも関わらず、アンナ・カレーニナのよく知られているあらすじは簡単なものです。すなわち、既婚貴族女性のアンナが、貴族将校のヴロンスキーとの不倫に走ってしまい、社交界から拒絶され最期は投身自殺してしまう、そんな話です。

では、そんな一言で終わる話がなぜ2000ページもの大作なのでしようか。それはタイトルこそ「アンナ・カレーニナ」とアンナひとりが主人公かのような書き方ですが、実際には当時のロシア社交界が織りなし合う群像劇といった方が適切なほど、多くの登場人物たちに代わる代わるスポットがあてられ、かつ彼ら/彼女らの一挙手一投足や心情が細かく描写されるからでしょう。
物語を読み味特には、当時のロシア貴族の社交界に関する風俗文化、キリスト教的価値観や結婚観と急速に芽生えてきた科学技術から産まれた新しい価値観の対立、当時の政治的情勢や周辺国との関係、共産主義的考えの萌芽といった当時のロシアやロシア貴族たちの生活や政治の考え方の前提知識がかなり必要となります。特にキリスト教的結婚観とロシア社交界の恋愛観の矛盾していそうでうまく同居している理屈はアンナの不貞に対する夫カレーニン社交界の態度を理解するために重要です。ですが、これらの前提知識はほとんどを小説中の登場人物たちが様々な立場、考え方から意見を述べてくれるので小説を読んでいくうちに当時のロシア貴族の色々な考え方の多くを理解できるようになります(巻末の読書ガイドにかなり丁寧な解説も補足として大変わかりやすいです)。それほどに「アンナ・カレーニナ」の中には多くの登場人物の行動や思考にページが割かれ、それが私たち現代の日本人でもアンナ・カレーニナの理解する助けとなるガイドになっているのです。


ここで本作の主要登場人物を簡単に紹介します。

アンナ
本作主人公。兄オブロンスキーを訪ねた先で、青年将校ヴロンスキーと出会ったことで不倫関係になる。夫カレーニンを裏切りヴロンスキーのもとに行くも、社交界からの孤立やヴロンスキーの愛情が希薄化していくという強迫観念に押しつぶされ投身自殺。

リョービ
もう一人の主人公の貴族青年。
他の貴族と異なり自分の領地に住み自らも農業経営を行う。後述のキティに結婚を申し込むも断られる。農業経営の経験から、都市に住み理論だけの農業経営論に疑問を感じ、自分なりの農業のあり方を考えるようになる。後に結婚を断られたキティと再び出会うことになる。
物語はアンナとこのリョービンに起こる出来事を行ったり来たりしながら進んでいく。アンナとリョービンの二人が物語中で交わることはほとんどなく、二人の話は独立して進んでいくので、読者はこの二人の対比の意味づけを考えながら物語を読み進みていくことになる。

ヴロンスキー
アンナの不倫相手。もともとキティという貴族子女と恋仲にある好青年の将校であったがアンナと出会うことでキティを捨ててしまう。
留まることのないアンナからの愛の欲求全てに応えることができず最終的にアンナを失う。

レーニン
アンナの年上の夫。やり手の実務家。家庭、仕事共に順風満帆のはずがアンナの裏切りによって歯車がずれていく。社交界への体面、キリスト教社会の中での離婚の難しさからアンナが不倫を認めても離婚をためらう。

キティ
貴族の娘でオブロンスキーの義理の妹。結婚相手としてリョービン、ヴロンスキーどちらを選ぶか迷った上でヴロンスキーを選ぶも裏切られ、精神的に参ってしまいドイツに療養する。

オブロンスキー
都市に住む貴族。アンナの実兄で古くからのリョービンの友人。浮気症だが、人望のある社交家。
義理の妹のキティとリョービンをくっつけようとしたり、義理の兄のカレーニンとアンナの仲をどうにかしようとしたりと登場人物たち全員をつなぎ、物語を進める推進役を務める。


長くなったのでいったんここで切ります。
多分次はないですが気が向いたら小説の良かったところ、特に小説のオープニングの登場人物たちの登場の仕方について感想を書いていきます。