1年前の風景

書いて1年経ってから公開しています

読んだ本ベストテン

マシアス・ギリの失脚を読んで読んだ本ベストテンだ、っと言っておきながら自分のベストテンって何だろうと思って考えてみました。

 

 

2019年4月に初めて作る現在のベストテン

 

順番は特にありません。

 

1.風の歌を聴け

2.深夜特急

3.熱学思想の史的展開

4.豊饒の海

5.理科系の作文技術

6.マシアス・ギリの失脚

7.夜想曲集

8.星を継ぐもの

9.シンセミア

10.こころ

 

1,2,3,5,6あたりは当確。

8,9は一応入るかな。

三島由紀夫カズオイシグロは入れたいがどれを入れるか悩む。

10は入れるものがないから何となく。まぁ5回くらいは読んでるし。

どうしてもエンタメ系は読んだ後にすぐ忘れてしまうから純文系、特に長い話が多くなってしまう。

その他候補としてはアンナ・カレーニナ数学ガールシリーズ、大学への数学スタンダード演習、孤独のグルメ

 

読んだ本のこと

なかなか時間が取れず、読んだ本のブログを書くことができませんでした。

少しだけでもその記録をつけておきます。

何冊か読んだはずなのにもう覚えていない本もちらほら。まぁその程度の本だったのでしょう。

 

〇SF編 

ゲームの王国

ゲームの王国(上) (早川書房)

ゲームの王国(上) (早川書房)

ゲームの王国(下) (早川書房)

ゲームの王国(下) (早川書房)

ユートロニカのこちら側

ユートロニカのこちら側 (ハヤカワ文庫JA)

ユートロニカのこちら側 (ハヤカワ文庫JA)

零號琴

零號琴 (早川書房)

零號琴 (早川書房)

時砂の王

時砂の王

時砂の王

構造素子

構造素子 (早川書房)

構造素子 (早川書房)

名もなき王国

 

名もなき王国

名もなき王国

 

小川哲という作家が面白いと紹介してもらいゲームの王国、ユートロニカのこちら側と2作続けて読んでみました。ゲームの王国は単行本で上下巻とそこそこのボリュームがありましたが、特に上巻が飛び抜けて面白かったです。

時代は1970年代の冷戦下のカンボジアクメール共和国からポル・ポト政権下に移行する中、ある農村に生まれた神童、ムイタックとポル・ポトの隠し子、ソリヤがポル・ポト政権下の圧政の中で生き抜くというというストーリー。徹底した時代考証や時代背景、本当に当時の農村の人々が考えそうな思考の描写がリアルに描けているだけでなく、登場人物それぞれのキャラクターの狂気的な魅力が良かったです。

残念なことに上巻の面白さが際立つがゆえに、下巻の設定がファンタジーのように感じてしまい、いまいち受け入れられませんでした。ソリヤの設定もうまく生かしきれ感じがしなかったです。

 

〇純文学 編

コンビニ人間

コンビニ人間 (文春文庫)

コンビニ人間 (文春文庫)

忘れられた巨人

忘れられた巨人

忘れられた巨人

マシアス・ギリの失脚

マシアス・ギリの失脚 (impala e-books)

マシアス・ギリの失脚 (impala e-books)

スティル・ライフ

スティル・ライフ (impala e-books)

スティル・ライフ (impala e-books)

 

マシアス・ギリの失脚は今まで読んだ本の中でもずば抜けて面白い本でした。

恥ずかしながら今まで池澤夏樹の本を読んだことがなかったのですが、この本がたまたま棚にあるのを手に取ってパラパラと冒頭の数ページを読んだときに、まさしく私が読みたかった小説がこれであることを過信できました。そして、それは全くもって間違いなかったです。はじめの一文からKOされた小説は今までなかったと思います。

朝から話をはじめよう。
すべてよき物語は朝の薄明の中から出現するものだから。

南の島の小国、ナビダード民主共和国の大統領、マシアス・ギリ。小国という立ち位置をよく理解し、日本やアメリカの後ろ盾をうまく利用しながらナビダートの近代化を進めてきました。時には最小限の必要悪を使いながらも内政、外交ともに優れた手腕を発揮するマシアス・ギリに日本筋からの怪しい外交提案がなされるところから物語(すなわち主人公マシアス・ギリの失脚が)進んでいくというストーリーです。

日本との微妙な外交問題、大統領選に関する疑惑という現代的な問題が語られる一方で、日本人を乗せたバスの消失、不思議なベンチ、幽霊との会談という超常現象的なエピソードが挟まれ、現代的な話だと思っていたものは神話に回帰し、神話的な力がマシアス・ギリの運命をほんろうします。さながら現代を舞台にした神話のようなストーリーです。

単行本で600ページ近くあるにもかかわらず全く手が止まることはなく、それでも600ページあるのでさすがにいくら読んでも物語がいつまでもいつまでも終わることなく続き、物語の終わりにはすべての物事があるべきところに流れ着き、大河の流れに身を任せるかのような心地よさを感じました。これだけ質量のある本を読んだ後なのに、しばらくしたらまた読み返そう、そう思わせる内容でした。

特に中終盤のユーカ・ユーマイ祭と巫女のシーンは生きることを全肯定する実に素晴らしいシーンでした。マシアス・ギリは物語の中で失脚するのですが、失脚してもなお、このマシアス・ギリの物語はよき物語であると、そう思えます。

すでに谷崎賞を受賞しており、名作であることは多くの人々が理解しているとは思うのですが、この本が発売された1993年当時よりも、今の時代のほうがより高く評価される作品ではないかと思います。何年か前に『ラゴスの旅人』が再評価されたように、この本も今の流行を30年近く前に先取りしていた再評価されてほしいです。

 

自分の中の過去読んだ本ベストテン入りを果たしました。

 

〇話題の本 編

ファクトフルネス

FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣

FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣

出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと

羊と鋼の森

羊と鋼の森 (文春文庫)

羊と鋼の森 (文春文庫)

 

ファクトフルネスはあまりビジネス書を読まない自分にとってはかなり面白い本でした。もしかしたらこういう内容はすでに多くのビジネス書やビジネス雑誌には書かれていて自分が無知なだけかもしれませんが、自分の認識が実は20世紀のままであること、世界から貧困や紛争、不平等は確実に少なくなっているという肯定感を感じることができます。読んでよかったです。

 

出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のことは各書評で結構好評であったためサクッと読んでみました。確かに面白かったです。ちょっと後半は思っていたのと違って自分からいろいろな有名人に会いに行くというテーマが大きかったように思います。出会い系サイトXというものがどういう趣旨のものかわかりませんでしたが、自分があってツマラナイと感じた人々のことを載せてしまったりするのはどうかなって感じです。

でも基本的にはすごく面白くて、これ読むと確実に自分も出会い系で(不不純でない)新しい人々との出会いを求めてみたい!って思ってしまいます。ちゃんとうまくいかなかったり危ないやつのことも載っけておかないと確実にまねして危ない目に合う女性出てきそうだし、構成上どこかで必要な部分でもあるだろうとも感じます。

 

 羊と鋼の森本屋大賞ってことでハードルを上げすぎてやや物足りなさを感じました。全体的にさらっとしていて低カロリー。ピアノの調律師を題材にしていて、ピアノの音の表現とても優れていて調律の世界の面白さをよく表現できていると感じ、静かで品のある作品だけれども、ストーリーの起伏があまりなかったり、登場人物たちの印象がどれも一緒に感じてしまいました。全体的に単調さを感じます。

 

〇理学系 編

数学記号の誕生

数学記号の誕生

数学記号の誕生

 

こうして自分の読んだ本の履歴を振り返ってみると見事に自分の好きな本しかということがはっきりとします。

 

一年間の振り返り

さてこのブログも無事、一年間を終えて公開したブログの記事が出てきました。


いまは2019年4月21日。
三宮でバスの事故があり、4月は平成から令和になることで世間でもちきりです。

1年間のはじめにたてた目標はどれくらい達成したでしょうか。

ハーフマラソンを2hr以内に走ること→2hrとちょっと

・将棋で初段になること→全然ダメ

・ブログを定期的に続けられること→〇何とか続けています

・資格をいくつか取得すること→〇電検を取りました。

Pythonが少しわかるようになること→×全然わかりません

・タイピングが多少は早くなること→×あんまり早くないですね

というわけで全然ダメでした。前半は頑張りましたが後半仕事もプライベートもいろいろあってやることが多すぎましたね。
今年は
・性格が明るくなること
・友達を1人作ること
・資格を一つとること
ラズベリーパイを使えるようになること
ハーフマラソンで2hrきること
・GP千葉に行ってみること
の6本立てで行きたいと思います。

よろしくお願いします。

2019年オーストラリアGP

見ました。

 

 

いろいろあって更新時期が非常にあいてしまいました。

いろいろの理由はプライベート様々な出来事があったからですが、一番の原因はこれでしょう。

 

mtg-jp.com

 

これのせいで1か月ほど生活を破壊されてしまい、ブログを更新するどころか寝る暇もないほどでした。

とにかくテンポよくゲームができて、現実やMOに比べて資産の減り具合が遅く、まったく費用が掛からないので、一日何時間もプレイしてしまいます。

めでたく人生の禁止リスト入りしてしまい3月上旬にアンインストール。現実世界に帰ってきました。

 

さて、掲題のオーストラリアGP。面白かったです。昨年のトロロッソ・ホンダはバーレーンでの4位入賞のレースこそ奮闘しましたがその後は低調であまりぱっとしないシーズンでした。

今回レッドブルとパートナーを組むことになり、あのルノーをこき下ろすレッドブルと組んで本当に大丈夫か、と心配でしたがこの走りならホーナーもきっとご満悦のはずです。

ガスリーの走りだけ気になりますが、今年は2,3勝くらいは期待できるレースペースで週末が楽しみになりました。

鈴鹿も行きたいですね。

 

 

 

 

マルドゥック・スクランブル完全版1

読みました。

 

 

3まで続くのか!と。

1で一応終わりかと思っていました。

 

SFとして期待して読みましたが、自分にとってはラノベに近くてちょっと苦手なタイプの本でした。シェルやボイルドの動機がよくわからず、なぜそこまでの危険を冒してまで犯罪を行い主人公たちと対立するのかの理由付けが分からず、世界観もちょっと典型的すぎる権威へ諂った腐敗政治に感じて作品の深さを感じられませんでした。

あえて良い点を挙げれば、噛ませの殺し屋たちのキャラクターがいいですね。シェルやボイルドよりもずっと振り切れていてグロテスクで。

 

自分の周りの人の評価は非常に高いので残念ながら自分の感性がずれているのでしょう。3まで読むのはいいかな。

ノモンハンの夏

読みました。

 

ノモンハンの夏 (文春文庫)

ノモンハンの夏 (文春文庫)

 

舞台は第二次世界大戦直前の満州国とモンゴルの国境線。満州国の軍事を支配する日本陸軍関東軍部隊は、モンゴルと満州の国境の境界線に関して、モンゴル(とモンゴルを支配するソ連)との間で折り合いがつかず、幾度となくモンゴル軍と軍事的衝突を繰り返していた。

東京三宅坂日本陸軍総本部では長引く日中戦争の疲弊、国際的な英仏米ー独伊間の不協和音から近い将来勃発するであろう世界大戦の懸念から、これ以上の戦線の拡大を避けるべく関東軍ソ連との不要な衝突は避けるべしとの通達を出す。しかし、関東軍の作戦司令部の辻と服部を中心とした血気盛んなグループがこの指令を曲解あるいは無視し、ソ連軍の戦闘力を過小評価して無謀な国境線での戦闘(のちにノモンハン事件と呼ばれる)を仕掛け、関東軍は後の第二次世界大戦でも類を見ないほどの壊滅的な惨敗を期することになる。

本書はこのノモンハン事件を、主に世界情勢、日本首脳陣、日本陸軍幹部そして関東軍首脳(特に関東軍幹部の辻)といった大局的な観点から、なぜこのような無意味で無謀な戦闘が行われてしまったのかを追うノンフィクション作品になっている。

=====

 

一個人の観点から読む戦争記も実に得るものが多いですが、このような世界情勢や日本軍部の観点からみる戦争記も、また興味深かったです。本書の主眼は根性論や精神論、メンツに支配された関東軍幹部の暴走の無意味さ、そしてその暴走が分かっていながら止めることができなかった陸軍本部の秀才たちの無責任さの追及にあります。なぜ彼らはその役職に伴う職務を全うし、日本国の利益と前線で戦う兵士たちのために行動できなかったのか。絶えず著者は彼らの行動の愚かさを私に訴えてきます。

一方で自分自身のことを振り返ると陸軍本部の秀才たちに自分の姿を重なり、著者の非難は私自身にも向かているような感覚になります。果たして自分もまた会社会において日々を無責任に過ごしていないだろうか、実践を伴わない空疎な理論屋になってしまっていないか。常々そういう自分に気づくことがあるので彼ら秀才たちが無責任にも事態を放置してしまうことにあきれつつも、共感を覚え、そして著者の非難が重く胸に響きました。

 

 

本書を読んでいて一番印象的なのは、日本の首脳陣のほとんどは第二次世界大戦がはじまる前から世界大戦が生じる可能性が濃厚であることが分かっていて、独伊から執拗に迫られてる日独伊での三国同盟を結んでしまえば世界大戦に日本が巻き込まれ米英と戦争になること、そして日本の軍事力では米英に勝つ見込みがないことを正確に理解していたという事実です。本書は第二次世界大戦のことは記載ありませんが、本書読めば唯一陸軍(ここは関東軍ではなく陸軍総本部)だけが日本の戦闘力を客観視できず、国民世論を焚きつけて世界大戦に日本を参戦させたとみることは、そこまで大きな間違った認識ではないでしょう。

海軍は自国と米英との海軍力の差を正確に理解し戦争が負け戦でしかないことを再三主張し、昭和天皇はじめとした政府首脳も陸軍が暴走している現状を憂慮して陸軍人事に注文を付けるなど、これほどまで世界情勢と陸軍の危うさを理解しておきながら結局、陸軍の主張通りにしてしまい第二次世界大戦が起きてしまったことは残念でなりません。

そしてその参戦には焚きつけられた我々市井の世論によって強く後押しされていたという事実も忘れてはいけないのではないでしょうか。

三島由紀夫紀行文集

読みました。

 

三島由紀夫紀行文集 (岩波文庫)

三島由紀夫紀行文集 (岩波文庫)

 

直前に読んだ岡潔の「数学する人生」がどうにもこうにも自分には合わず、3分の2ほど読んだところで読むのを辞めてしまったおり、予備の本として旅行に持ってきたのがこの本でした(もちろん私は旅行には抱えきれないほどの本を持っていくのが常で、今回も1泊の旅行にもかかわらずこの2冊含めて6冊の本をカバンに入れて持ってきていました)。「数学する人生」の内容がどうも自分好みではなかっただけに、理性と感性が研ぎ澄まされた三島調に冒頭の航海日誌から「これだよ、これこれ」と思わずにはいられませんでした。

一冊読み切って振り返ってみても、巨大な太平洋をだた一隻白波を立てて渡る客船プレシデント・ウィルスン、旅が始まろうする予感、その一乗客としての三島、彼のカミソリのような理性と感性の混じるユーモア、冒頭の航海日誌が一番のお気に入りです。

数学する人生

数学する人生

 

旅行の時に読む本は旅行に関する本であったり、現地に関する本であることが求められます。自分にとって旅行とはそれ自体が目的であり手段であります。すなわち移動中の電車や飛行機の道中に持ってきた旅行本を読みこれから始める旅行に向けた気持ちを高めることが旅行の一番のだいご味であり、現地についてしまえば、旅行の目的はほとんど終わってしまったも同然です。

この三島由紀夫紀行文集はアポロの杯をはじめとした、三島の海外旅行見聞録や種々の雑誌に寄稿した2,3ページの国内の紀行文などが納められており、上記の旅行の本としてはまさにうってつけの本でした。